帰ってきた犬
拾った犬を飼いだしたのはもう10年近く前だった。しかしノラ出身のためか、元気だったが急に弱って昨年の8月に死んでしまった。私が家に戻る直前に一声高く鳴いた、、、と聞いたので、最後の叫びだと直感して急いで見に行くと、やはり息を引き取ったばかりだった。私は死骸を抱いて物干し台に安置しようと歩きだすと、犬の死体から青白い光が電流のように飛び交うのを見た。よくお化けが出てくる映画シーンなどで、青白い光が飛び交うのを見るが、あれは本当なのだと思った。死体の周りに青白い光が電流のように飛び交うのだ。ああ、本当に死んだんだな、、、と、切なくなる。その犬がなんと戻ってきた、、、。もちろんお化けなどではない。夢の中の話しだ。夢の中で海岸にいた私は遠くからワンワン吠えながら犬が走ってくるのを見る。犬は私に喜んでとびかかり、その感触は生きていたときそのもの。うちのワンちゃんである。ノラらしく結構汚れていていたが、元気そうで、いかにも子分格という犬を従えていた。次の場面では、丸テーブルに座って私と犬と子分の犬が三人で向き合って座っている。妙な光景だが、犬たちはちゃんとすわっているように見えた。私の犬は目がきらきらと輝き、本当に従順そうに私の顔をみつめている。目が覚めて考えたが、ちょうど新暦のお盆の入りの日だった。8月の初めに死んだので、去年の旧暦の8月のお盆では、まだ霊が向こうに行き切っておらず、今年の新盆を待ってやってきてくれたのだろう。少しでも早く来たかったのか、新暦の7月のお盆でやってきてくれたのだと思う。今夜でもうお盆もおしまいで戻っていっただろう。
命あるものの悲しさ早春の光の中をゆすり蚊の舞ふ
この歌は数年前の宮中歌会始での皇后の御歌である。蚊の命に同じく生きる者としての悲しさを歌った大統領も首相もおそらく法王もいなかったことだろう。