岩田の勝因
あーん、ダービーダメだった。勝ったのは岩田が乗ったディープブリランテ。レース後、岩田は馬の上で男泣きに泣いた。単にダービーに勝てたからではない。
岩田は騎乗停止にあっていて、昨日の土曜日から停止期間が過ぎて復帰。騎乗停止期間が一週間違っただけで、ダービーに乗れなかったわけだから、ひやひやだったと思う。
偉いのはその間、岩田はずっとディープブリランテのそばにおり、つきっきりで調教はもちろん、ブラシ掛けまでして、馬に寄り添うようにしていった。騎乗停止が幸いしてディープといられる時間もとれたのだろう。
実は、岩田は、これまでディープとはケンカ状態にあったと私は思っている。岩田自身、おそらく、ディープは自分の乗り方を嫌っている、、、と思っていたのではないか。少なくとも、騎乗時に馬と折り合わず、しかたなく強引に馬を引っ張り、言うことをきかせたはずだ。
しかしそこは名手の岩田。反省がすごい。ディープに乗るには、自分のこれまでの騎乗法ではダメだ。と感じてたと思う。そこで岩田はディープに寄り添い、常にそばにいて、馬との気心を通じ合わせた。
そのせいあって、人馬の意思の疎通がはかれたことは、パドックでの落ち着きに出ていたし、何より、馬場入りの際にまるでいつもと違って、馬も人もお互いに信頼しあっているのがよく伝わってきた。私はこの時点で、きょうはディープにやられる、、、と確信した。すでに馬券は買ってしまっていたので、どうしようもなかったけど。
二週間、岩田がつきっきりで世話をしたことで、人馬には信頼が生まれていたのだ。
スタート後も折り合っている。四コーナーを4番手くらいで回り、直線に向くと、岩田は追い出す。ディープも早めに先頭に立つが、この時、一瞬、岩田の力でディープを持っていこうとする出してはいけない岩田の癖が一瞬でかかったのを、私はテレビで見逃さなかった。
しかし、いつもの岩田とは、そのあとが違っていた。接戦であるにも関わらず、岩田はディープを追うことより、馬に負担がかからない姿勢を維持することを優先させた。あの剛腕の岩田が、である。
最高のレースで、もっとも勝ちたいレースで、岩田は自分の感情を抑え、ディープの気持ちを優先させてあげる。そのため、ディープは気持ちよく我慢できてよく辛抱し、鼻差というダービーを制したのである。
岩田の涙は自分に勝った涙であり、自分が馬のことを考えてあげれば、それに馬が応えてくれるという、感動の涙なのだ。
これをきっかけに岩田の騎乗方法は今後変化していくだろう。剛腕岩田から、おそらく、その馬その馬に合った乗り方へと重心が移っていくはずだ。
この内容を岩田に読ませたら、「その通りです。愛先生、、、」と、涙を流すことは、、、ないと思う。
しかし、よいレースでした。
あーあ、さあさあ、仕事仕事。