お堂でビワ温灸

先日、とても久しぶりにお会いしたM書房のHさんと女流小説家のMさん。食事しながらふと、確か私がビワ温灸のことを言い出すと、二人は驚きの声をあげた。「ちょうどビワ温灸の本を出したところ」と言って、バックの中から、最新版の本を取り出した。ビワ関係では第一人者であるT先生の新刊本だった。偶然に驚いたのだが、お二人はビワ温灸の将来性に何か直感があるらしく、これを広める館のようなものをつくる、、、、との話しをしてくれた。私もビワ温灸には深い興味があって、自分でやったこともある。その時はマンションの中だったため、ビワ葉が焦げる煙と香りがマンションの部屋に充満する。最初はよかったが、これは現代の生活スタイルにはどうしても合わないな、、、、と思った。しかしビワ温灸はじめ、ビワには何かある、、、との気持ちが抑えられない私は、何かよい方法はないかな、、、と考えたとき、非常に懐かしい思い出というか、懐かしい気持ちが、あるイメージの中でひとつの光景となった。それは、古いお寺のお堂に、大勢の人が集まって、それぞれが交互にビワ温灸をしあうものだった。漂うビワ葉の煙、、、やさしくこすりあう不思議な情緒と連帯感、、、何組もの人たちがまったりとした、充足した時を癒しの中で味わっていく。今は忘れたお堂の光景、、、。これを想像するだけで、何とも言えない幸福感が沸き起こった。そうした思いがあっただけに、私はつい「館なんて、お金をかけて作る必要なし。お寺のお堂があるでしょ」と。お寺さんが貸してくれるかどうかはわからないけど、昔は何かがあると人はお寺に集まり、癒しや助け合いなどの会合や時を持った。日本人の心と体の中にしみ込んだお寺文化。それとビワ温灸はよくマッチする。明治以降、神道がメインになり、お寺さんは法事や葬式程度に縁がなくなっているが、長いこと、人は何かが起きれば和尚さんに相談したり、仏様を拝んだりしてきた。あまり上昇志向は感じないものの、何か心休まる装置としてお寺は機能していたと思う。私もそうかもしれないが、どちらかというと神社派が多い昨今だが、お寺文化やお寺がもたらす安心作用を失った日本人はどこか不安定である。ビワ温灸とお寺のセットは、これは非常に意義があると思われた。お二人もすぐに納得されて、じゃ、やってみようよ、、、という段取りに。こうなると早い。さっそくお寺さんに今あたっているが、候補寺にたどり着き次第、秋から始める予定。
 広い本堂で二人一組になって、一人は横になり、一人は温灸をほどこす。これを交互にやり、気心も伝わってくる。お隣でも二人一組が楽しそうに行っている。ビワの煙がお堂に程よく立ち込め、仏様も喜んでいるように思える。怒る人も怒る神もいないまったり感の中で、何とはなしに癒されていく。日本人の魂の故郷、気負いのない平等感は、お堂で形成されていった面がきっとある。人は成長する必要もなく、がっかりする必要もなく、ただ自分であるだけでいいという世界が煙の中に見えてくる。それを孤独の中でたどる必要はなく、ビワ温灸に集う人々とともに実感する。ああ、お寺を失ったことは大きかったな、、、と今更ながらに気づく。昨今の坊主は多くが相当おかしなことになっていると思うが、この文化というか環境をもう一度復活させられないだろうか。ビワ温灸はおそらく若者に愛されると思う。マンションでやったら嫌われるかもしれないが、お堂でみんなで行えば、不思議で誰もが許され、認めてもらえる空間と時の流れが過ぎていく。これを必ずやりますので、どうか楽しみにしていてください。スタートは東京のお寺が希望。ビワ葉は私のオフィス近辺は日本一の産地であり、豊富。スタッフは言いだしっぺの三人。一人1500円程度の会費をもらい、お寺さんにお布施し、ビワ葉代とする、、、というようなスタートになるでしょう。関心を持たれた方、また、よいアイデアなどありましたらどうぞお聞かせください。
 日本人はこれまでとにかく走ってきました。そして誰が一番早く走れるかという価値観に縛られすぎてきて、とても疲れています。早く走れなくても、あまりお金が稼げなくても、それほど美人でなくても、そんなことと関係ない、自分を自由にほどき、小さな死を体験し、ゆったり休んで、また自分でいいや、、、と思い直せる、、、そんな装置や文化や場所が少なすぎた。昔はきっとお寺がそれをやっていたんだね。明治以降のあのおかしな雰囲気は、お寺文化と魂をほどくゆるやかな場所や装置をなくしたことときっと関係している。もう一度、それを取戻し、たおやかで、誰もが自分を受け入れられる、人、場所、時を作っていきましょう。
 「お堂でビワ温灸」にどうぞご参加ください。用意が整い次第ご案内いたしますね。あと、自分でもやってみたい、、、と思う方は、ぜひやってください。協力するところはしあいましょう。情報交換も含めてお願いします。ビワ葉はどこにでもありますが、良質のビワ葉はこちらでも手配可能です。数年後には日本中のお寺さんでやってたら面白いな、、、。