百武彗星の思い出
占星術では彗星は良い意味では扱われない。たとえば、長い長い雨が上がった夜空に、大きなほうき星が現れたとすれば、人間の遺伝子はそれを大動乱が始まるサインと受け取るはずだ。私がこれまでに見た最大の彗星は、間違いなく百武彗星だった。1996年の3月だったと思う。その数ヶ月前に百武氏によって発見されたこの彗星は突然地球に接近し、巨大な彗星となった。都会ではその全貌を見た人はいないので、この彗星のものすごさは知られていない。しかし、百武彗星を目の当たりに見た人は、これまでに見た最大の彗星だったと誰もが認める。本当にこれは凄い彗星だったのだ。全天の半分以上、私には三分の二を閉める大きさに見えた。後で調べると、最大100度の尾が出ていた可能性があるとかいう記事を見たので、確かに全天の三分の二近くを占めたことになる。私が見たのは星を見るにはよいとされる佐久地方においてだった。百武彗星を見るために佐久へ向かい、夜の8時ごろに現地に着いた。そこは市街地だったが、すでに全天に渡ってぼうーと大きな彗星が頭上にあった。これは凄いと、食事を済ませてから真っ暗な山中に行き、夜空を見上げると、百武彗星は北の空に鎮座し、なんと、その尾が北斗七星のひしゃくを貫いていた。私は星を見るのが仕事の人間なので、ひしゃくを貫くこの彗星の意味を考えて恐怖を抱いた。「ああ、時代は変わるな、、、、それも誰もが想像もできないほどに変化するな」との絶対的感触やその直感を得た。このような彗星はひんぱんに現れるものではなく、ましてひしゃくを貫くというような象徴的な彗星は何千年、何万年に一度というような単位でないと拝めないものだと思う。確かに百武彗星は超周期彗星であり、これまでに15000年で公転しておったが、今回の重力関係によって、次回、戻ってくるのは、7万年以上も先になるということである。はるか永久のかなたから突然現れた百武彗星。それは迫り来る危機に気付こうとしない人類に、空からの警告を発するものに思えてならなかった。北斗七星は北方に輝く星なので、そこにあった百武彗星も北の空を一周して明け方には頭の向きを変えて地球から去っていった。一晩中、北の空で百武彗星は輝き、人類に何を語りかけたのだろうか。ひしゃくは天の水を汲み取る器。その底が破かれたということは、北に抑えていたもの、、、北にあった壁が破られて、人類に降り注ぐことを意味する。北に押し込められていた神の復活であるかもしれないし、北の地から訪れる大きな厄災とも捕らえられる。天の智が人類に与えられることをも意味するが、そうした知恵がなければどうにもならない時代がやってくるということでもある。百武彗星は非常に珍しく放射能を発生する彗星だとか。そこらへんにも時代の変化を教える先見性があったことが今ならわかる。もう10年以上も前のことなのに、、、、と思われる方もいるかもしれないが、珍しい天体の変化があらわすものは潜在的であり、それが具体化していくにはどうしても時間がかかる。百武彗星が出現してから今年で15年、、今とこれからの時代を象徴する彗星だったとして何もおかしくない。へールポップ彗星や木星に衝突した彗星など、ほかにもいくつかあったが、その規模において、百武彗星をしのぐものはなかった。しかしこの彗星の威容を語るものは、実際に見たものだけであり、マスコミからの情報ではそんなに凄い彗星だとは思えないようになっている。天気も悪く、取材地の選定など、マスコミの情報班はその全容を捉えることに失敗したのだと思う。
今年の10月には地球に接近するエレニン彗星がやってきて、来年の冬至を待たずマヤ暦の終わりと重なるらしい。エレニンは百武をしのぐ彗星になるのだろうか。私にはわからないが、百武彗星のことがそれほど語られずに終えてしまっていることに違和感がどうしてもあり、百武彗星のもたらす意味を知りたいとずっと思ってきた。個人的にだが、百武彗星出現が現代の終末的事柄を暗示しているように私には思えてならない。天のひしゃくは百武彗星によってすでに破れている。水漏れであり、アナロジー的には大変な事態だが、それは神の知恵、天の知恵が人類に与えられる面も持っている。テクノロジーと重要な知識が一部の勢力に独占されていたのがこれまでの時代だったが、天の知恵が百武によって開放されたと捕らえるならば、この彗星を過小評価しようとする無意識の流れもわかってくる。彗星は確かに恐ろしいものとして占星術では考えるけど、その恐ろしい時代を封じ込める知恵、それを乗り越えて新たな地平を作り上げる知恵を、同時に示してもいるのだ。アクエアリス時代はまだ先であり地球歳差の点からは確かにそうかもしれないが、すでに神々の知恵の水は地上に降り注ぎ始めていると考えるべきだ。百武彗星は誰の思惑をも介入させることなく突如その姿を現し、今は亡き百武氏に発見されて、そのわずか一ヶ月か二ヶ月後に巨大彗星として現れた。つまらぬ人間の作為や知恵とは程遠い、もっと大きな天の仕組みによって動いて来たたのが百武彗星だった。すでに天の本当の知恵の使用は誰にでも許されている。天の知恵を信頼し、それを使い、新たな時代を築ける人間が、今の私たちなのだ。こんなにありがたいことがあるだろうか。権威や権力など外にあるものに頼るより、もっと内にあるもの、すなわちあなたや私たちを守ってきた天の知恵を信じ、それを体現する時代がすでに始まっているわけである。