陛下 76歳

今上陛下は本日で満76歳のお誕生日を迎えた。小沢と宮内庁長官とのやり取りなどがあり、天皇について多くの人が考えることとなった。私は披講を学習するなどもあって、歌を守ってきた天皇に極自然な気持ちで愛着がある。天皇制を批判する人も多いし、その理由にもそれなりのものもあるとは思うが、国と国民、そして世界の安寧を願うことを専門に続けている文化には凄いものを感じる。歴代天皇はおそらく孤独な面があり、お気の毒な歴史もきっとあるように思う。私は偶然に披講に関心を持ち、それを学ぶことになるが、学習会を行う場所は港区三田にある元神命宮である。この元神明宮は1003年前に一条天皇の勅令によって建てられた神社。以来、一条帝についての関心がわいたが、偶然が重なって陽明文庫などに行く機会を得たりして、当時の一条帝に思いをはせることがある。そして思うのは、道長との確執など、帝の位に就いた時からの嫌がらせや定子の運命などを知るにつれ、複雑な思いを抱いた。歴代天皇は口にこそ出さないが、なぜ孤独であったかと云うと、周囲が天皇を利用しようとしたからである。関白記によると一条帝は死の間際まで道長にじっと監視されていることがわかる。天皇にとって藤原家との関係は、必要であると同時に言い難い苦しみの歴史だった面があるのかもしれない。天皇は常に反論ができない立場にある。お声が直接聞こえないところに置かれている。間で取り持つ者が天皇を利用した歴史が間違いなくあるだろう。わずかに歌によりその思いを伝えることができた。そして天皇家こそ歌の家でもあった。和歌披講も天皇によって継続されたと言ってもおかしくはない。こうした文化的意味を天皇から切り離して語ることにはかなり無理がある。天皇家はもともと政治の家でも事業家でも権力家でもなく、歌と文化の家という面がもっとも大きい。そしてこれからの天皇制のありように、このことが極めて重要になってくると思う。文化の家という性格を無視した天皇批判はポイントがずれるのではないだろうか。