デリバティブと大企業

日本の大企業は非人間的なコスト削減の成果でかなりの利益体質だった。それは今でも変わらないが、あっという間に屋台骨が傾いてきている。なぜかというと、景気後退はこれからのことで、実はその奥にデリバティブの失敗があると思う。さんざん従業員と国民に無理を言ってきて儲けてきたお金を、実は下記のような形で失っているのだ。

社長、かなり内部留保があります。
どのくらいある。
ざっと15兆ほどです。
運用はどうなっている。
確実な国債、外為でのリスクヘッジ、ある程度は株式での運用、関係会社の社債などです。
そうか。
欧米のように多少はリスクをとった運用も一部では考える時期ではないでしょうか。
しかし危ない橋は渡れんぞ。
わかってます。とは言え、全体の数パーセント程度はハイリスクハイリターンの投資がいまの時代には向いています。実際、欧米の金融機関はのきなみ凄い成績を上げており、国際競争の面から言っても、日本を代表する我が社も数パーセントほどの投資から始めるのは必要な措置だと思いますが。
しかしそんな商品があるのか。安全でしかもリターンの多いものが。
社長、これをご覧ください。トリプルAの債券があります。しかもゴールドマンサックスが売りだしているので信頼はできるはずです。
そうだな、少額ならいいだろう。
はい、さっそく買いに入ります。
くれぐれも1000億以上は買うなよ。なにせ、世界一安全な我が社のことだ、石橋を渡る以外はするなよ。
はい、よくわかっています。

そして今回の破たん劇が起きて、次のようになった。

社長、大変です。
何がだ。
我が社の内部留保がすべてパーになってるかもしれません。
何寝ぼけてるんだ。お前はバカか。
トリプルAだったあの商品にまったく買い手がつかず、実勢価値がわからなくなっています。
そんなこともあるのか。驚いたな。しかし、1000億以上は買ってないだろ。
もちろんです。800億しか買ってません。
ならば捨て値で売っていいから損金処理しろ。
社長、しかし売りたいにも買い手がいませんし、何より、レバレッジが300倍ついております。
どういうことだ。
万が一、この債権がゼロになった場合、我が社は24兆円の損が確定してしまいます。破産です。
何、、、、、。お前は首だ。

ここで新たな担当者とのやりとり。

いいか、例の債券は売るな。売れば損金確定でおじゃんだ。まだ値段がついてない、ということは買ったままの値段で会計上は通用するので、そうしておけ。そのうち、どうにかなる。

以上のような状況が実際に起きていると思う。これから一度は会計上で逃げられても、ついに逃げられなくなるレバレッジ商品の損金処理による行き詰まり、倒産が多くなる。しかもほとんどがこれまでの優良な企業である。これはしばらくは国ぐるみで隠すだろうが、こうし
たベースがあるので、大企業は焦った自己保身に走っているのだ。大手の法人などは金を増やすことしか考えてなかっただろうから、きっと凄いことになっていると思う。また、学業を商売に変更させつつあった有名な大学、一流の学校にも、同様のケースが多くなっているだろう。まじめで冷たい知性の欲深さが最も引っかかるケースでの金融崩壊が進んでいる。